(1)役職定年制の下で新定年まで現役続行した後、定年退職金をもらうか
(2)退職金をもらった後、定年前再任用短時間勤務をするか
給与は?退職金は?税金は?定年前でも、退職所得控除は使える?
概要をまとめると次のとおりです。
(1)役職定年制の下では給与は7割に削減。各種手当(扶養手当、住居手当)は続行。退職金はピーク時の給与で計算されるため、減額はありません。これに加えて、60歳以降の退職金積上げは、7割削減後の給与計算にて加算されます。
(2)定年前再任用短時間勤務では、現状の再任用制度と同様、給与は単一号俸。扶養手当や住居手当は無し。退職金は現状どおり、定年前であっても退職所得控除は使えます。
※ちなみに住民税は、前年度の所得に応じてかかるため、退職後1年間は高額な税金がかかります。役職定年制の下で働くと所得落差が緩和されます。
公務員定年延長の改正法案が決定しました(2021年6月4日)。それでは、詳しく解説します。
【公務員の定年延長】役職定年制(60歳以後の職員)の給与額、退職金、各種手当
役職定年制(60歳以後の職員)の給与額、退職金、各種手当について解説します。
役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)とは
管理監督職の職員は、
①60歳の誕生日以後の翌年度4月1日までに、管理監督職以外の官職に異動させる。
②ただし、引き続き管理監督職として勤務させる特例を設ける。
※役職定年による異動により公務の運営に著しい支障が生ずる場合に限る
管理監督職の場合です。
役職定年制(60歳以後の常勤職員) の給与額は、7割に減額
定年引き上げ後は、改めて任用され職務(級)の位置づけを行う再任用とは異なり、任用・職務は延長された定年退職日まで継続します。ただし、7割に減額されます
職員の俸給月額は、職員が60歳に 達した日後の最初の4月1日(特定日)以後、その者に適用される俸給表の職務の級 及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする。 (役職定年により降任、降給を伴う異動をした職員の俸給月額は、異動前の俸給月額の7割水準)
内閣官房サイト(2021年4月)
https://www.cas.go.jp/jp/houan/210413/siryou1.pdf
役職定年制(60歳以後の常勤職員) の賞与(期末勤勉手当)
現役職員同様、人事評価に応じた期末勤勉手当が支払われます。ただし、基礎額が下がっているため、現役世代ほどの金額にはなりません。
役職定年制(60歳以後の常勤職員) の退職金は、減額なし
特定日以後の俸給月額の7割への引き下げについては、いわゆる「ピーク時特例」( 国家公務員退 職手当法の第5条の2 )が適用されます。
退職手当の「基本額」は、 次の期間を分けて計算します。
・現在の定年60歳の年度までの期間
・俸給月額が7割 となる特定日以降の期間
60歳に達した日以後に、定年前の退職を選択した職員が不利にならないよう、 当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当を算定する。
総務省サイト(2020年)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000675581.pdf
60歳に達した日以後の職員の退職手当
(1) 退職事由は「自己都合」ではなく「定年」としての取り扱い
全日本自治団体労働組合 総合労働局 (2020年6月)
(2) 手当の算定方法はこれまでと同じ、給料月額の引き下げには「ピーク時特例」を適用
https://www.jichiro-hokkaido.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2020/06/a095b9600776e4a8471c568a0b8a37d7.pdf
役職定年制(60歳以後の職員) の各種手当は、現役同様
再任用職員になると、扶養手当や家賃手当が無くなりますが、各種手当は現役職員同様の扱いとなります。
【公務員の定年延長】 定年前再任用短時間勤務の給与額、退職金、各種手当
役職前再任用短時間勤務の給与額、退職金、各種手当について解説します。
定年前再任用短時間勤務とは
60歳に達した日以後定年前に退職した職員を、本人の希望により、短時間勤務の官職に採用(任期は65歳まで)することができる制度を設けます。
再任用職員制度が使えます
定年前再任用短時間勤務の給与額
給与、勤務時間等については、現行の再任用(短時間)勤務と同じ取り扱いです。
給与、期末勤勉手当は、常勤職員よりも低い額になります。
定年前再任用短時間勤務の退職金
退職所得として扱われ、退職所得控除が適用できます。
定年を延長した場合にその延長前の定年に達した従業員に支払った退職一時金の所得区分について、(中略)所得税基本通達30-2(5)に定める給与に該当し、退職所得として取り扱うのが相当であると考えます。
国税庁: 定年を延長した場合にその延長前の定年に達した従業員に支払った退職一時金の所得区分について
https://www.nta.go.jp/about/organization/takamatsu/bunshokaito/gensen/180306/besshi.htm
退職金の計算は、りそなグループのサイトが分かりやすいです。
退職金にかかる税金は、「所得税」と「住民税」
りそな銀行:退職金にかかる税金、所得税・住民税の計算方法、控除額など解説
https://www.resonabank.co.jp/kojin/shisan/column/taishoku_unyo/column_0001.html
【公務員の定年延長】 情報提供・意思確認 制度の新設
任命権者は当分の間、職員が60歳に達する年度の前年度に、60 歳以後の任用・給与・退職手当の制度に関する情報提供を行い、60歳以後の勤務の意思を 確認する。(新地方公務員法附則第23条)
任用の違いによる任期、 給料・手当、勤務時間等の労働条件の違いを説明する制度です。
任用の選択は本人の希望に基づくことが大前提となります。
財源問題や定数管理を理由として定年前再任用短時間勤務へ誘導されることが無い様に気をつけなければなりません。
【公務員の定年延長】 役職定年制で給与は7割、退職金は減額なし。再任用との違い まとめ
60歳以後の働き方について、選択肢が増えました。
金銭面でいえば、常勤職員を続ける方がよいでしょう。
60歳時点でまとまったお金がどうしても必要な場合は、退職金を一時金で受け取れる定年前再任用職員がよいでしょう。
自治体の定数管理や財源を考えると、再任用職員になってもらいたいというのが実情でしょうが、自分の生活設計を元に考えるとよいでしょう。
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